英語圏での容積・容量の表し方について(Part 2)

数学×英語の小話

はじめに

解説

ビールの容量

英語圏にはビールの容量を専用に表す単位があります。
イギリスでよく目にするビールの単位は、上で紹介した「pint」などです。
しかし、ここで紹介するのは私たちが飲むときの単位ではなく「ビールの輸送や醸造などで使われる大きな単位」です。

まず、アメリカ合衆国以外の旧大英帝国の国々(e.g. イギリス、オーストラリア、カナダなど)では、帝国単位を使用しています。
メートル法の浸透により、以下の単位がどこまで使われているかはわかりませんが、歴史的に重要な単位です。
以下がその単位の例です。

単位「imperial gallon」との比「liter」の量
(imperial) gallon4.546 09 L
pin4.5 imperial gallons20.457 4 L
firkin9 imperial gallons40.914 8 L
kilderkin18 imperial gallons81.829 6 L
barrel36 imperial gallons163.659 L
hogshead54 imperial gallons245.489 L
butt108 imperial gallons490.978 L
tun216 imperial gallons981.955 L
*参照:「A Dictionary of Weights and Measures for the British Isles」

この単位系統では「1 Imperial gallon = 4.546 09 L」を基準としています。
この基準は、1824年に最初に定められた「1 imperial gallon = 4.543 460 L」と異なります。
また、正しくは1895年に「1 Imperial gallon = 4.546 092 L」に変更されています。

ビール専用の容量があるのが旧大英帝国らしいですよね。
ここで出てくる「tun」は私たちが普段使う重さを表す「tonne (metric ton) 」の元となった単語です。

帝国単位には、ワインの容量を表すものもあります。
これらはビールの場合と同じ名前を使いますが、値が異なります。
例えば、ビールでは「1 butt = 108 imperial gallons」ですが、ワインでは「1 butt (pipe) = 126 imperial gallons」となります。

また、アメリカ合衆国も元々は大英帝国(今のイギリス)の植民地でした。
しかし、アメリカ合衆国は帝国単位が導入される前(1824年以前)に独立したので、帝国単位以前の単位(*「English units (イギリス単位)」と言います)から独自の変化をしています。

まず、基準には米国慣用単位の「1 US liquid gallon = 3.785 41 L」を使います。
しかし、上の「liquid volume」で紹介した単位と違うところは「1 barrel = 31.5 gallons」だったのに対して、ビールでは「1 beer gallon = 31 gallons」で「0.5 gallons」小さいところです。
この「beer gallon」から、その「eighth(8分の1)」、「sixth(6分の1)」、「Quarter(4分の1)」などを考えます。

アメリカでは「1 barrel」の表す値が、原油やウイスキー、ビールなどの液体によって異なります。

単位「US gallon」との比「liter」の量
US gallon3.785 41 L
Eighth Barrel31/8 US gal14.668 5 L
Sixth Barrel / Sixtel31/6 US gal19.558 0 L
Quarter barrel / Pony keg31/4 US gal29.336 9 L
Import keg13.2 US gal49.967 4 L
Half barrel / Full keg31/2 US gal58.673 9 L
Beer barrel31 US gal117.347 L

ここに出てくる「keg」という単語は「ビールなどを入れる小さいたる」のことです。
「barrel」はそれよりも大きな樽のことで、アメリカ合衆国では丁度「barrel が keg の2倍の大きさ」となります。
しかし、実際には国や醸造所によって樽のサイズは異なります。
注意点として、「keg」は「barrel」とは違い単位ではありません。

料理で使われる計量

料理で使われる計量単位には「大さじ」や「小さじ」などがありますが、他にも多くのものが存在します。
英語圏の国では、使われる単位が同じですが表す値が異なる場合が多くあります。
さらに、同じ国の中でもどれを基準にして書いた料理本なのか分からない場合もあります。
ここでは、イギリス、アメリカ合衆国での簡単な計量方法を紹介します。

アメリカ合衆国

もっとも簡単なのはアメリカ合衆国で、そのまま「米国慣用単位」を使います。
計量に使われるのは「Liquid volume」の方です。
料理の場合は例外として、塩などの固形物の場合でも「Liquid volume」が使われます

米国慣用単位

単位記号日本語サイズ (mL)
Dropdr.0.05134 mL
Teaspoontsp.小さじ4.929 mL
Tablespoontbsp.大さじ14.79 mL
fluid ouncefl. oz.液量オンス29.57 mL
CupCカップ236.6 mL
(Liquid) pintpt液量パイント473.2 mL

イギリス

これに対して、イギリスでは帝国単位もしくはメートル法での計量単位が使われます。

帝国単位

単位日本語サイズ (mL)
Teaspoon小さじ5.919 mL
Dessertspoon中さじ11.84 mL*
Tablespoon大さじ17.76 mL
fluid ounce液量オンス28.41 mL
Cupカップ284.1 mL
pint液量パイント568.3 mL
*「Dessertspoon」に関しては、帝国単位では「11.84 mL」ですが、実際に現在使われている値は「1 dessertspoon = 10 mL」です

米国慣用単位では「teaspoon」などが「liquid volume」として使われています。
一方で、帝国単位でのこれらの単位は「あくまで料理だけで使われる単位」です。

昔の大英帝国の人々は食事のために「spoon」を使い分けていました。
イギリスで言う「dessert-spoon」は「プディングなどを食べるためのスプーン」、「table-spoon」は「食事の盛り付けや提供に使われたスプーン」です。
これらの他にも「salt-spoon」、「coffee-spoon」、「soup-spoon」など多くの種類のスプーンがあります。
私が調べられた限りでは上の計量単位以外を使うことはほぼありません。

メートル法

単位日本語サイズ (mL)
Teaspoon小さじ5 mL
Tablespoon大さじ15 mL
Cupカップ250 mL

もちろんイギリスでは、メートル法として国際単位系の「litre (リットル)」も使用されます。

上のメートル法はイギリスで現在使われているものです。
しかし、「1カップは 200 mLでは?」と思った方もいると思います。
このような違いが生じる理由は「カップがメートル法(国際単位系)の正式な単位ではないから」です。

日本はメートル法(国際単位系)で認められている「ミリリットル」を基準として使うことによって、「日本の1カップ=200 mL」と定義しました。
なので「日本の1カップ」はメートル法の一部であると言えます。
その他にも、オーストラリアの「1 tablespoon」は「20 mL」で、カナダの「1 cup」は「227.31 mL」と定義されています。

それに対して、日本や中国で古くから使われている尺貫法(尺、貫、寸、合、里など)はメートル法の一部ではありません。
その理由は、これらの単位が「国や地域、時代などで表すものが異なるのでメートル法の単位で定義できない」からです。

ゆーた
ゆーた

容量には他にもたくさんの注目するトピックがありますが、今回の解説は以上にします。

最後に

いかがでしたか?

普段の生活に関わるような単位からも、数学と英語の関連性を見ることができるのはおもしろいですね。これからも、このような記事を載せて、皆さんにも数学と英語をより好きになってもらえるように頑張っていきます。

次の記事でお会いしましょう。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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