はじめに
前回は「留学に意味はあるのか?」について考えましたが、記事の内容としてはかなり抽象度が高いものだったと思います。
きっと、みなさんの中には「もっと具体的に考えたい」と思った方も多いでしょう。実際、留学を真剣に考えるなら抽象的な話だけではいけませんよね。
そこで今回は、「留学のメリットとデメリット」について考えてみます。
留学のメリットとデメリットとは?
ただし、ここで私が個人的な意見だけでメリットとデメリットを並べても、あまり意味がありません。大切なのは、みなさん自身が考えることです。そこで、次の方針で整理していきましょう。
- 留学をするにあたっての自分の「立ち位置」を理解する
- 複数の「視点」から、それが自分にとってメリットかデメリットかを整理する
ここからは、「1.立ち位置を明確にするための主な軸」と「2.私が重要だと思う視点」をあげていきたいと思います。
【その1】 今の自分の立ち位置を理解する
まずは、自分がどんな立場から留学を考えているのかを明確にしてみましょう。
私の考えでは、次の4つを明確にするので十分だと思います。
1.留学をする時期
単に「高校生」「大学生」という分類だけでなく、今が自分にとってどのような時期なのかも考えてみましょう。
| 高校生 | 将来の進路を考え、基礎学力をつける時期 |
| 大学生 | 専門分野を深め、キャリア探索をする時期 |
| 大学院生 | 研究や専門性を高め、職業のキャリア形成の時期 |
| 社会人 | スキルアップやキャリアの方向転換を考える時期 |
2.留学の期間
おおまかに、短期・中期・長期留学に分けられるのではないでしょうか。
数週間~半年くらいを短期、半年~1年を中期、1年以上を長期と考えるのがいいでしょう。
期間が変わるだけで得られる体験や学びの深さも大きく変わります。
3.留学の目的

多くの人にとっては、「言語(主に英語)の取得」や「大学・大学院での進学・研究」、「キャリア形成」などが大まかな目的となるのではないでしょうか。
4.留学する国
留学に行く国は、人によってバラバラです。どの国にどのような特徴があるのかについては、留学の情報を集めることでより分かってきます。
ここでは、上であげた目的をもとに、簡単な絞り込みをしてみましょう。例えば、英語を話せるようになりたいなら英語圏(米国・英国・オーストラリア・ニュージーランドなど)に行くのがベストでしょう。大学院で研究をしたい人なら、研究力のある米国や英国の大学を目指すのが一般的です。
【その2】 考えられる主な視点
自分の「立ち位置」が整理出来たら、次はメリット・デメリットを考えるための「視点」を見ていきましょう。ここからあげる「視点」は、みなさんにとってメリットにもデメリットにもなり得ます。私もそれぞれの視点について例を挙げていくので、どんなメリット・デメリットが自分にとってあるかを書き出してみましょう。

視点1:学び・キャリア

勉強のスタイルの変化
【デメリット】
高校生にとっては、日本の受験勉強から外れることで同世代との競争力が下がるかもしれます。
【メリット】
一方で、学校での拘束時間は減りテストなども少ないので、自分の興味のある科目などを深堀りできるとも考えられます。
専門性の早期確立
【メリット】
大学院での留学なら研究環境のレベルが高くなるというメリットがあるでしょう。またイギリスの大学では、日本の大学のような4年制ではなく専門科目のみを学ぶ3年制なので、より早く自分のやりたいことができるという特徴もあります。
【デメリット】
大学生・大学院生の留学では日本でのネットワークや就活機械が減るというデメリットも考えられます。
視点2:言語・文化

英語力の伸びしろ
【メリット】
高校留学・大学留学では、人とのかかわりが多いので日常的な英語を使えるようになることが多いです。
【デメリット】
ただ、大学院留学・社会人留学では、専門的な英語やビジネス英語を身につけられても流暢に英語を話せるようにはなれないというようなケースもあると思います。
また、若い時期での留学は深い議論や高度な日本語力が弱める危険性もあります。恥ずかしいことですが、私も中学レベルの漢字の書き方を忘れることなどがよくあります。
文化適応
【メリット】
多様性を肌で感じることで、異文化理解が深まるというのはよく聞く話でしょう。世界を知ることで、日本という国が恵まれていることや日本の文化のすばらしさをよく知れるというのは、大きなメリットです。なかなか自分では気づきにくいことですが、より広い視野で物事を見ることができるようにもなります。
【デメリット】
しかし、中には「日本での生活の息苦しさ」が理由で海外留学を選ぶ人もいるでしょう。そんな人にとっては、帰国後の文化的孤立感や逆カルチャーショックを感じることもあるかもしれません。
視点3:人間関係・人生経験

人脈形成
【メリット】
留学をすると、自分たちと同じように他国から留学に来ている学生と出会えることがほとんどです。彼らとのつながりを作ることで世界中の友達ができることは、将来的にも大きなメリットだと思います。
【デメリット】
しかし、例えば私のように高校・大学の期間すべて海外で過ごすと、日本国内での友人の数が少なくなるかもしれません。一生海外で生活するならば問題はありませんが、将来日本に帰って生活する場合にはデメリットも多くなります。
自己成長の機会
【メリット・デメリット】
留学をすると日本にいたときよりも自分一人の時間が確保されます。これまでは、毎日の生活に追われ無視してきたような自分の弱さや欠点、そしてあまり真剣に向き合えていなかった問題などとも向き合う機会になります。
ただし孤独やストレスの負荷が高く、精神的なリスクも十分にあります。留学に慣れるまでは、ホームシックやノイローゼになる留学生もいます。
【メリット】
また、大学生以降の留学では一人暮らしをするのが一般的です。一人暮らしをしていくうちに、生活するうえで必要なスキル(料理や買い物、掃除など)を身に着けることができます。
高校留学で寮生活やホームステイをする場合でも、親や周りの人間に頼らず自分一人で決断をする機会は増えます。環境が変わることで、自己主張・自己管理が鍛えられるというのもメリットとしてあります。
視点4:将来への影響

金銭的な負担
【デメリット】
みなさんもご存じの通り、留学には莫大な資金が必要となります。それは単に将来家計を圧迫するというだけでなく、留学をはじめた本人が「頑張らないといけない」という責任感に襲われるということも十分にあります。過度なストレスは、将来の精神的不安につながる恐れもあります。
最近では、国や企業が提供する留学支援もあります。また、自分の通っている高校・大学での交換留学制度を使いローコストで留学することも視野に入れておきましょう。
キャリアの選択
【メリット】
高校生から社会人まですべての年代に言えることですが、留学をすることで国際的なキャリアに近づくと言えるでしょう。日本の高校や大学に通っていると、なかなか海外の大学・大学院に進学することは難しいです。しかし、言語が喋れたり、日本国外での卒業資格などを持っていたりすると、その可能性は大きく広がります。
【デメリット】
ただ、海外は入学・卒業のタイミングが日本と異なるので、もう一度日本でのキャリアを考えようとすると、思うような流れでいかない・いくつかの選択肢はあきらめないといけないケースもあります。
価値観の広がり
【メリット】
さきほど述べたように、他の文化を知ったり自分と向き合う時間を作ったりすることで、より広い価値観を得られるというのは大きなメリットです。
【デメリット】
一方で、日本での固定化された価値観に再適応するのが難しくなる可能性もあります。
注意点
ここまで見てきたものは、あくまで留学を考えるための“視点”でしかありません。もしデメリットが多いと感じても「留学自体が自分にとってデメリットだ」と決めつける必要はありません。
これらの視点が決断するうえで等しく重要というわけではありません。もしあなたが大学院での研究を目的として留学をするなら、文化に触れることや語学力をアップは最優先ではないかもしれません。
自分にとって、どの視点が重要なのかについてもしっかりと考えておきましょう。

最後に
書き出したことで、不安が大きくなったという方もいるかもしれません。
しかし、自分にどのようなメリット・デメリットがあるかを理解しておくだけでも、より納得感をもって留学を決断できるはずです。
自分の意志でいきたいと思い留学する人の多くが、「留学して良かった」と感じると思っています。デメリットは、単なるデメリットであって解決できない問題というわけではないので、留学を始める前から落ち込むようなことではないと私は思います。


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