はじめに
海外を旅行したり、スーパーで輸入食品などを見たりしていると、見たことない単位に出会うことがよくあります。その中でもよく目に留まるのが食品などのパッケージに書かれた「容積・容量」を表す単位です。
今回は、英語での容積・容量の単位の表し方について解説していきます。
この記事は、「第10章:単位についての英語表現(中級)」の内容の追加部分でもあります。2つの記事を読むことで世界で使われるいろいろな単位の理解をすることができます。
→ 第10章:単位についての英語表現(中級)
また、Part 2 も読みたい方は以下のリンクから飛んでください。
→ 英語圏での容積・容量の表し方について(Part 2)
(所要時間:15~20分)
解説
単位と単位系についての確認
「第10章:単位についての英語表現(中級)」で詳しく説明した内容ですが、ここで簡単に確認しておきましょう。
まず単位系とは、国や地域ごとに決められた単位の表し方・仕組みのことでした。
そして、世界で使われている単位系には次の3種類があります:
- 「International system of units(国際単位系)」:一般的には「Metric system(メートル法)」と呼ばれます。正しい認識としては、国際単位系が現在のメートル法として採用されていると考えてください。要するに、今後は採用されるものが変わる可能性があるということです。
- 「Imperial system of units(帝国単位)」:1824年よりイギリスと旧イギリス連邦諸国(アイルランドやオーストラリアなど)で使用されている、もしくは使用されていた単位系です。
- 「United States customary units(米国慣用単位)」:アメリカ合衆国で現在でも使われている単位系で、帝国単位に似ていますが異なる部分もあります。
次のセクションからは、「容積・容量」の単位について見ていきます。私たちの普段使う国際単位系とは異なり、帝国単位と米国慣用単位がどう違うのかを細かく解説します。
容積・容量について
国際単位系の場合は「liter (イギリス英語では litre) 」を使いますが、帝国単位と米国慣用単位ではそれぞれ異なった区別があります。
まず、国際単位系では容積・容量のことを「capacity」と呼びました。
それに対して、帝国単位と米国慣用単位では容積・容量を「液体と固体の2つの体積」として区別しています。
分類 | 意味 |
---|---|
Liquid volume | 「液体の体積」、飲料や石油などの運搬で使われる単位 |
Dry volume | 「固体の体積」、穀物や野菜などの収穫高の単位として主に使われる |
これの関係を分かりやすく表したものが下の表です。

上の図のように、帝国単位と米国慣用単位でも使われている「体積(volume)」は、「Dry volume / Liquid volume(容積)」と違うものです。
帝国単位の場合
まずは、帝国単位での分類から見ていきましょう。
Liquid volume
単位 | 「liter」の量 | 記号 |
---|---|---|
(fluid) ounce | 0.028 413 L | fl oz |
gill | 0.142 065 L | gi |
pint | 0.568 261 L | pt |
quart | 1.136 522 L | qt |
gallon | 4.546 09 L | gal |
Dry volume
単位 | 「liter」の量 | 記号 |
---|---|---|
peck | 9.092 18 L | pk |
bushel | 36.368 72 L | bsh もしくは bu |
quarter | 290.949 76 L | qtr |
これらの単位同士の関係性(比率)については下の「イギリスとアメリカ合衆国で同じ単位の数値が違う理由」で説明しています。
米国慣用単位の場合
ここからは米国慣用単位での分類を見ていきます。
Liquid volume
単位 | 「liter」の量 | 記号 |
---|---|---|
minim | 0.000 061 611 5 L (= 0.061 611 5 mL) | min |
fluid dram | 0.003 696 69 L (= 3.696 69 mL) | fl dr |
teaspoon | 0.004 928 92 L (= 4.928 92 mL) | tsp |
tablespoon | 0.014 786 8 L (= 14.786 8 mL) | tbsp |
fluid ounce | 0.029 573 5 L (= 29.573 5 mL) | (US) fl oz |
shot | 0.044 360 2 L (= 44.360 2 mL) | jig |
gill | 0.118 294 L (= 118.294 mL) | gi |
cup | 0.236 588 L (= 236.588 mL) | cp |
(liquid) pint | 0.473 176 L (= 473.176 mL) | (US) pt |
(liquid) quart | 0.946 353 L | (US) qt |
(liquid) gallon | 3.785 41 L | (US) gal |
(liquid) barrel | 119.240 L | bbl |
oil barrel | 158.987 L | bbl |
hogshead | 238.481 L | hhd |
Dry volume
単位 | 「liter」の量 | 記号 |
---|---|---|
(dry) pint | 0.550 610 L | pt |
(dry) quart | 1.101 12 L | qt |
(dry) gallon | 4.404 88 L | gal |
peck | 8.809 77 L | pk |
bushel | 35.239 1 L | bu |
(dry) barrel | 115.627 L | bbl |
表の中で、カッコを使って「(liquid)」と「(dry)」と明記しているものは、「liquid volume」と「dry volume」の両方で使われる単位の名前です。
どれも表す値が少し違います。
イギリスとアメリカ合衆国で同じ単位の数値が違う理由
ここまで、英国(帝国単位)と米国(米国慣用単位)での容積・容量の単位を比べてきました。
その中で特に注目すべき点は「同じ名前の値でも表す値が違うところ」だと思います。
ここではその原因について簡単に説明します。
原因1:基準に使う同じ名前の単位の数値が違う
まずは下の年表を見てください。
- 1495 ~ 1587 年Winchester measure
イングランド王であったヘンリー7世によって定められた体積の基準単位
- 1588 年以降(1825 年まで)Exchequer Standards の導入
イングランド女王であったエリザベス1世によって定められた重さや体積、長さなどの単位系
(*帝国単位が採用される前までの単位系をまとめて「English units」と言います) - 1776 年アメリカ独立宣言
アメリカ合衆国が誕生し、大英帝国の一部ではなくなる
- 1826 年以降Imperial system of units (帝国単位)の導入
1824年には導入が決まりましたが、実際に使われるようになったのは1826年からです
- 1832 年以降US customary units (米国慣用単位)の導入
- 1985 年Weights and Measures Act 1985
ここで「Imperial gallon = 277.42 cubic inches = 4.546 092 L」となる
「Exchequer Standards」では体積の単位として多くのものが使用されていました。
例えば、ワインには「Wine gallon = 231 cubic inches = 3.378 5 L」、ビールには「Ale gallon = 282 cubic inches = 4.621 2 L」、穀物には「Corn (Winchester) gallon = 268.8 cubic inches = 4.404 9 L」が使われていました。
独立後のアメリカ合衆国では、この「Exchequer Standards」を参考に「US customary units」が作られました。
液体(Liquid volume)には「Wine gallon」、固体(Dry volume)には「Corn (Winchester) gallon」が選ばれました。
そして、これらはそれぞれ「US liquid gallon = 3.378 5 L」と「US dry gallon = 4.404 9 L」と名付けられました。
これは、現在のイギリスで使われる「Imperial gallon = 4.546 092 L」と少し異なります。
原因2:使う単位同士の比が異なる
ここで「Liquid volume」と「Dry volume」の単位の比についても考えましょう。
単位 | Imperial Units (帝国単位) | US liquid volume |
---|---|---|
Gallon | 1 gallon | 1 gallon |
Quart | 1/4 gallons | 1/4 gallons |
Pint | 1/8 gallons | 1/8 gallons |
Gill | 1/32 gallons | 1/32 gallons |
Imperial fluid ounce | 1/128 gallons | |
US fluid ounce | 1/160 gallons |
「Liquid volme」のサイズで違うところは「fluid ounce」です。
分かりづらいかもしれないので上の関係を言い換えると「1 Imperial gallon = 5 Imperial fluid ounces」と「1 US gillion = 4 US fluid ounces」となります。
単位 | Imperial Units (帝国単位) | US dry volume |
---|---|---|
Bushel | 8 gallons | 8 gallons |
Peck | 2 gallons | 2 gallons |
Gallon | 1 gallon | 1 gallon |
Quart | 1/4 gallons | 1/4 gallons |
Pint | 1/8 gallons | 1/8 gallons |
「Dry volume」に関しては、イギリスとアメリカ合衆国で比に差はありません。
注意として、基準となる「gallon」の値はイギリスとアメリカ合衆国で異なることを忘れないでください。
これをまとめると次の二つが違いの原因となります。
- 「gallon (ガロン)」のサイズが異なる
- 「Liquid volume」の「Fluid ounce」の比が異なる
最初に表で紹介した数値を比べると、実際に比率が上のような関係になっていると確認できると思います。
最後に
いかがでしたか?
当初の予定では、もう少し実用的な部分だけを載せるつもりでした。しかし、気づけば内容量のかなり多い記事になってました。
私自身も、いろいろな文献やインターネットの情報などを探しながらかなり細かくまとめたので、勉強になることがたくさんありました。皆さんにとっても、内容が役立ったり、興味を持ったりしていただけたのなら幸いです。
次の Part 2 では、ビールの容量と料理の計量に関する特殊な容積・容量の単位を見ていきます。
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