英語圏での容積・容量の表し方について(Part 1)

数学×英語の小話

はじめに

解説

単位と単位系についての確認

第10章:単位についての英語表現(中級)」で詳しく説明した内容ですが、ここで簡単に確認しておきましょう。

まず単位系とは、国や地域ごとに決められた単位の表し方・仕組みのことでした。
そして、世界で使われている単位系には次の3種類があります:

  • International system of units(国際単位系)」:一般的には「Metric system(メートル法)」と呼ばれます。正しい認識としては、国際単位系が現在のメートル法として採用されていると考えてください。要するに、今後は採用されるものが変わる可能性があるということです。
  • Imperial system of units(帝国単位)」:1824年よりイギリスと旧イギリス連邦諸国(アイルランドやオーストラリアなど)で使用されている、もしくは使用されていた単位系です。
  • United States customary units(米国慣用単位)」:アメリカ合衆国で現在でも使われている単位系で、帝国単位に似ていますが異なる部分もあります。

次のセクションからは、「容積・容量」の単位について見ていきます。私たちの普段使う国際単位系とは異なり、帝国単位と米国慣用単位がどう違うのかを細かく解説します。

容積・容量について

国際単位系の場合は「liter (イギリス英語では litre) 」を使いますが、帝国単位と米国慣用単位ではそれぞれ異なった区別があります。
まず、国際単位系では容積・容量のことを「capacity」と呼びました。
それに対して、帝国単位と米国慣用単位では容積・容量を「液体と固体の2つの体積」として区別しています。

分類意味
Liquid volume「液体の体積」、飲料や石油などの運搬で使われる単位
Dry volume「固体の体積」、穀物や野菜などの収穫高の単位として主に使われる

これの関係を分かりやすく表したものが下の表です。

上の図のように、帝国単位と米国慣用単位でも使われている「体積(volume)」は、「Dry volume / Liquid volume(容積)」と違うものです。

帝国単位の場合

まずは、帝国単位での分類から見ていきましょう。

Liquid volume

単位「liter」の量記号
(fluid) ounce0.028 413 Lfl oz
gill0.142 065 Lgi
pint0.568 261 Lpt
quart1.136 522 Lqt
gallon4.546 09 Lgal

Dry volume

単位「liter」の量記号
peck9.092 18 Lpk
bushel36.368 72 Lbsh もしくは bu
quarter290.949 76 Lqtr

これらの単位同士の関係性(比率)については下の「イギリスとアメリカ合衆国で同じ単位の数値が違う理由」で説明しています。

米国慣用単位の場合

ここからは米国慣用単位での分類を見ていきます。

Liquid volume

単位「liter」の量記号
minim0.000 061 611 5 L (= 0.061 611 5 mL)min
fluid dram0.003 696 69 L (= 3.696 69 mL)fl dr
teaspoon0.004 928 92 L (= 4.928 92 mL)tsp
tablespoon0.014 786 8 L (= 14.786 8 mL)tbsp
fluid ounce0.029 573 5 L (= 29.573 5 mL)(US) fl oz
shot0.044 360 2 L (= 44.360 2 mL)jig
gill0.118 294 L (= 118.294 mL)gi
cup0.236 588 L (= 236.588 mL)cp
(liquid) pint0.473 176 L (= 473.176 mL)(US) pt
(liquid) quart0.946 353 L(US) qt
(liquid) gallon3.785 41 L(US) gal
(liquid) barrel119.240 Lbbl
oil barrel158.987 Lbbl
hogshead238.481 Lhhd

Dry volume

単位「liter」の量記号
(dry) pint0.550 610 Lpt
(dry) quart1.101 12 Lqt
(dry) gallon4.404 88 Lgal
peck8.809 77 Lpk
bushel35.239 1 Lbu
(dry) barrel115.627 Lbbl

表の中で、カッコを使って「(liquid)」と「(dry)」と明記しているものは、「liquid volume」と「dry volume」の両方で使われる単位の名前です。
どれも表す値が少し違います。

イギリスとアメリカ合衆国で同じ単位の数値が違う理由

ここまで、英国(帝国単位)と米国(米国慣用単位)での容積・容量の単位を比べてきました。
その中で特に注目すべき点は「同じ名前の値でも表す値が違うところ」だと思います。
ここではその原因について簡単に説明します。

原因1:基準に使う同じ名前の単位の数値が違う

まずは下の年表を見てください。

大英帝国とアメリカ合衆国の単位の歴史
  • 1495 ~ 1587 年
    Winchester measure

    イングランド王であったヘンリー7世によって定められた体積の基準単位

  • 1588 年以降(1825 年まで)
    Exchequer Standards の導入

    イングランド女王であったエリザベス1世によって定められた重さや体積、長さなどの単位系
    (*帝国単位が採用される前までの単位系をまとめて「English units」と言います)

  • 1776 年
    アメリカ独立宣言

    アメリカ合衆国が誕生し、大英帝国の一部ではなくなる

  • 1826 年以降
    Imperial system of units (帝国単位)の導入

    1824年には導入が決まりましたが、実際に使われるようになったのは1826年からです

  • 1832 年以降
    US customary units (米国慣用単位)の導入

  • 1985 年
    Weights and Measures Act 1985

    ここで「Imperial gallon = 277.42 cubic inches = 4.546 092 L」となる

「Exchequer Standards」では体積の単位として多くのものが使用されていました。
例えば、ワインには「Wine gallon = 231 cubic inches = 3.378 5 L」、ビールには「Ale gallon = 282 cubic inches = 4.621 2 L」、穀物には「Corn (Winchester) gallon = 268.8 cubic inches = 4.404 9 L」が使われていました。

独立後のアメリカ合衆国では、この「Exchequer Standards」を参考に「US customary units」が作られました。
液体(Liquid volume)には「Wine gallon」、固体(Dry volume)には「Corn (Winchester) gallon」が選ばれました。
そして、これらはそれぞれ「US liquid gallon = 3.378 5 L」と「US dry gallon = 4.404 9 L」と名付けられました。
これは、現在のイギリスで使われる「Imperial gallon = 4.546 092 L」と少し異なります。

原因2:使う単位同士の比が異なる

ここで「Liquid volume」と「Dry volume」の単位の比についても考えましょう。

単位Imperial Units (帝国単位)US liquid volume
Gallon1 gallon1 gallon
Quart1/4 gallons1/4 gallons
Pint1/8 gallons1/8 gallons
Gill1/32 gallons1/32 gallons
Imperial fluid ounce1/128 gallons
US fluid ounce1/160 gallons

「Liquid volme」のサイズで違うところは「fluid ounce」です。
分かりづらいかもしれないので上の関係を言い換えると「1 Imperial gallon = 5 Imperial fluid ounces」と「1 US gillion = 4 US fluid ounces」となります。

単位Imperial Units (帝国単位)US dry volume
Bushel8 gallons8 gallons
Peck2 gallons2 gallons
Gallon1 gallon1 gallon
Quart1/4 gallons1/4 gallons
Pint1/8 gallons1/8 gallons
*実際にアメリカ合衆国が基準としたのは「Corn (Winchester) gallon」でなく、その8倍の「Corn (Winchester) bushel」ですが、ここでは分かりやすさのために「gallon」を基準に考えています。

「Dry volume」に関しては、イギリスとアメリカ合衆国で比に差はありません。

注意として、基準となる「gallon」の値はイギリスとアメリカ合衆国で異なることを忘れないでください。

これをまとめると次の二つが違いの原因となります。

  1. 「gallon (ガロン)」のサイズが異なる
  2. 「Liquid volume」の「Fluid ounce」の比が異なる

最初に表で紹介した数値を比べると、実際に比率が上のような関係になっていると確認できると思います。

最後に

いかがでしたか?

当初の予定では、もう少し実用的な部分だけを載せるつもりでした。しかし、気づけば内容量のかなり多い記事になってました。

私自身も、いろいろな文献やインターネットの情報などを探しながらかなり細かくまとめたので、勉強になることがたくさんありました。皆さんにとっても、内容が役立ったり、興味を持ったりしていただけたのなら幸いです。

次の Part 2 では、ビールの容量と料理の計量に関する特殊な容積・容量の単位を見ていきます。

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