はじめに
スペイン語文法の2つ目の章は「限定詞」です。今回は「定冠詞」です。
繰り返しになりますが、「限定詞」は
– 名詞と組合せて使われる。
– 名詞を具体的に示す。
– 人と物のどちらにも使える。
という特徴がある単語です。
これらの限定詞について押さえておきたい内容を「基礎編」にまとめました。基礎編は下記の記事からなります。
→ 第2章:限定詞(基礎編)限定詞とは
・第2章:限定詞(基礎編)定冠詞(本記事)
→ 第2章:限定詞(基礎編)不定冠詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)不定限定詞(1)
→ 第2章:限定詞(基礎編)不定限定詞(2)
→ 第2章:限定詞(基礎編)所有限定詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)指示限定詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)基数詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)序数詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)配分限定詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)疑問限定詞
→ 第2章:限定詞(基礎編)感嘆限定詞
本記事と併せて残りの記事も読むと、限定詞の内容が一通りカバーできます。ぜひ他の記事も読んでください。
定冠詞の役割
定冠詞は、「かんむり」のように名詞の前に置かれ、名詞の意味や範囲を「限定」します。
定冠詞を使うことで、名詞が前にでてきた名詞と同一であることを示します。
[例]
Tengo el libro. その本をもっています。
(前の会話で本の話題がでていて、それと同じ本をもっている、といっています)
Tengo libro. 本をもっています。
(どの本か、限定していません)
定冠詞の変化
定冠詞は、後ろの名詞の性と数で下の表のように変化します。
中性形の「lo」は抽象名詞に使われます(応用編で説明します)
男性形 | 女性形 | 中性形 | |
---|---|---|---|
単数形 | el | la | lo |
複数形 | los | las |
定冠詞の特徴
1.定冠詞の位置
定冠詞は、常に名詞の前にきます。
[例:動詞+定冠詞+名詞]
Tengo la clase.
その授業があります。(claseは女性名詞です)
2.他の限定詞との共用
定冠詞は、下記の限定詞とともに用いられません。
・所有限定詞
・指示限定詞
・疑問限定詞
これは、英語の場合をイメージしてもらうと、分かりやすいと思います。
例えば「私の(所有限定詞)」の場合、英語で、「the my book」とはいいません。
指示限定詞も同様で、例えば「この」の場合も「the this book」とはいいません。
これは、定冠詞と限定詞の両方に限定の役割があるため、機能が重複してしまうからです。
重複をさけるために同時に使われることはありません。
ただし、所有限定詞と指示限定詞が名詞の後ろにある場合は定冠詞を使うことができます。
[例:定冠詞+名詞+所有限定詞]
el libro mío
私の本(libro 男性名詞)
また、形容詞や副詞の機能をもった単語とは共用できます。
それらの単語は定冠詞と名詞の間か、名詞のあとに置くことができます。
[例:定冠詞+名詞+形容詞]
el libro pequeño
小さい本
定冠詞の例外的な使われ方
女性名詞に男性の定冠詞が使われるケースがあります。
これは、アクセントのある「ア」で始まる女性名詞の前でのみ起こります。
女性名詞の「águila(鷹)」の定冠詞は、規則では「la」になりますが「la águila(ラアギラ、太字にアクセント)」となり、発音しにくいですよね。
そのため、男性の定冠詞「el」が使われて「el águila(エルアギラ)」になります。
発音しやすくなったのがわかりますか?
スペイン語では「h」は発音しないので、例えば女性名詞の「hada(妖精)」でも同様のことがおこります。
この場合も「la hada(ラアダ)」ではなく「el hada(エルアダ)」になります。
身近にある定冠詞
スペイン語の定冠詞ですが、実は皆さんの身近にあります。
例えば単数形の定冠詞は、天気予報で聞くことができます。
エルニーニョ現象
太平洋の温度が異常に高くなる現象で、世界の気候に大きな影響がでます。
スペイン語では「el niño」で「男の子」を意味します。
男性名詞なので、男性形の「el」が使われます。
クリスマスの時期に発生することが多いため、「神の子、イエスキリスト=男の子」で、この名前がつきました。
ラニーニャ現象
反対に太平洋の温度が異常に低くなる現象です。
「la niña」は、スペイン語で「女の子」です。
女性名詞なので、女性形の「la」が使われています。
エルニーニョ現象の反対の現象なので「女の子」と名前がつきました。
複数形の定冠詞は地名で目にすることがあります。
特にスペイン人が進出したアメリカ大陸に多くみることができます。
ロスアンゼルス
Los Angeles。「angel」は「天使」です。
スペイン人が18世紀にきたときにはもっと長い名前だったのですが、その後に短い今の名前になりました。
ラスベガス
Las Vegas。「vega」は「肥沃な草原」です。
19世紀にスペイン人の探検家がきたときに、砂漠の中にオアシスがあったことから名づけられました。
最後に
いかがでしたか?
定冠詞は日本語に存在しない限定詞ですので、まずは基本をこの記事で覚えましょう。
ところで、女性形の冠詞は、単数形の「la」に「s」をつけて「las」になります。
これは名詞と同じで分かり易いと思います。
では、男性形の冠詞はなぜ「el」と「los」と不規則に変わるのでしょうか?
これには歴史的な背景があります。
スペイン語はラテン語から派生した言語です。
そのラテン語の定冠詞の変化形の影響なのです。
もともとのラテン語では定冠詞の男性形の単数形は「ille」、複数形は「illi」でした。
これがスペイン語に派生したときに、単数形が「el」、複数形が「los」に変わりました。
一方、定冠詞の女性形はラテン語では定冠詞の女性形の単数形は「illa」、複数形は「illae」でした。
これが、スペイン語では、単数形の「la」と複数形の「las」になりました。
もともとの形の違いと変化の過程で、現在のスペイン語の変化形になっています。
規則性がなくなってしまい、ちょっと残念ですね。
¡Hasta luego(またね)!
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